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【2001年 第12回全日本選手権準決勝 VS神戸大学 ゲームレポート】

【試合動画】

■甦る2001の記憶~ゲームレポートの前に~
 同志社ラクロス部の歴史で2001年の冬は特別なものだったのではないだろうか。同志社大学として4度目の全日本選手権。けれども2001年以降、同志社の紫の校旗は全日のスタンドではためていない。
 今後、同志社ラクロスの新たな歴史が生まれることを期待し、試合から15年以上を経た今、ゲームレポートを興す。

■fo前
 2001年12月、第12回全日本選手権準決勝。鶴見緑地競技場にて同志社大学VS神戸大学の一戦が幕を開けようとしていた。
 少し贔屓目かも知れないが、この大一番、おそらく観客の多くは同志社の勝利と予想していたはずだ。今シーズンの対戦成績は1勝1敗。リーグ戦では2年間続いた神戸の連勝記録にストップをかけたものの、関西Final3決勝戦では盛大に叩きのめされて意気消沈。しかしながら、この前日に行なわれた全日本選手権一回戦ではなにわラクロスクラブHornetsを撃破。クラブチームを相手に大番狂わせの大活劇を演じ、チームはのりにのっている。
 地力に勝る神戸、勢いのある同志社、プロ野球クライマックスシリーズのような分かりやすい構図。激戦は必死、否が応にも会場の期待は高まる。

■1Q
 リーグ戦開幕直後こそ調子があがらなかったものの、宮崎、筒井、服部の関西最強のMDセットを擁し、リーグ終盤にかけて類を見ない攻撃力で他校を圧倒してきた神戸大学。
 しかしながら同志社は三枚看板を相手に神機妙算で応じる。神戸ラクロスの代名詞であるブレイクラクロスを封じるべく、Face Offの両ウィングに"黒い弾丸"浅野(#26)および後に日本代表候補にも選出される小林(#23)のロングスティック2枚を配備。以降、この試合を通して同志社は、ブレイク封じおよび強力なMDからのオフェンスに対抗するため、ロング2枚をMDに貼り付ける一方で、ATの1枚をショートでマッチアップするという変則的なフォーメーションを採用するのだが、その選択がいかに効果的であったかは試合結果が物語っている。
 
 はたして同志社は前述の変則フォーメーションでFace Offの主導権は握らせなかったものの、その後クリアミスなどが続き、長い神戸オフェンスが続く。しかしATにショートマッチアップする"青い彗星"角田(#4)はその作戦が正しいことを証明し、今年度の関西ベストゴーリーの栄光にも輝いた"千手観音"河原(#16)は絶好調。開始早々雨あられのよう降り注ぐショットをスーパーセーブ、神戸の猛攻を水際で食い止める。
 
 一方、同志社のオフェンスは関西finalで対応出来なかった神戸ゾーン対して山下(#28)、岡崎(#1)の三回生MDコンビのゲームメイクhttps://youtu.be/te95MXbbRBY?t=8m43sや、福田(#29)のビハインドパスによるチャレンジhttps://youtu.be/te95MXbbRBY?t=11m59sから攻略の糸口を掴みつつあった。 

 試合が動くのは1Q開始15分、"極太バズーカー"山下(#28)が左上からの1on1で神戸DFをひきつける。そこを逃さず"芝上のトリプルアクセル"AT鈴木(#9)がひきつけられたDFの背中を縫ってサブマリンのカットイン、お手本のような2on2で先制する。試合開始より神戸のおせおせムードの中で、先制点はまさかの同志社。会場にどよめきが起こる。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=16m58s) 

 しかしながら直後のFace Offを制した神戸は、2回生ながらすでにエースの風格をかもし出す服部のシンプルな1on1からの同点ゴール。この後、彼がこの試合のキーマンとなるのだが、それを予想させる強烈なミドルショットである。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=17m49s
 
 俄然、神戸が勢いを取り戻すかと思われたが、再び期待を裏切って追加点をもぎ取ったのは同志社。神戸のエース筒井の至近距離からのショットを河原が神セーブ、河原からのクリアを受けた日本代表候補"進撃のコケシ"梶原(#24)が一気に敵陣まで駆けあがる。梶原はブレイクに対して飛び出してきた相手DFを十分に引きつけ、フリーになった鈴木がきっちりと押し込んでこの日2点目。 鈴木も神戸大学服部と同じく二回生、同志社も将来の日本代表候補が存在感をみせる。1Qはこのままタイムアップとなり、同志社リードで終了する。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=21m1s

 今冷静に考えれば、個人技においては神戸が圧倒的に勝っていたことは誰の目から見ても明らかだった。改めて映像で振り返れば、当時感じた以上に歴然とした差があることに驚く。同志社のボールの支配率はおそらく神戸の半分というところではないだろうか。
 一方で、グラウンドボールを制していたのは間違いなく同志社だ。「グラウンドボールを征する者は試合を征する」とはよく言ったもので、常に相手よりひとり多く、常に強い気持ちでグラウンドボールに立ち向かっていった。地力の差にも関わらずこの日の神戸と互角に渡り合えたのは、その愚直なまでの姿勢の賜物であろう。

■2Q
 しかしながら、時にその姿勢が空回りして、不用意な反則が多くなったことも事実である。
 2Q、グラウンドボールでのプッシングからのマンダウン。このチャンスをきっちりとものにされて同点に。敵陣に攻め込んでいるなかでのテクニカルファール、何ともタイミングの悪い失点であった。この後リズムを失った同志社は続けて追加点を許しスコアは2-3と逆転を許す。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=29m10s) 

 神戸のオフェンス力を考えると、ゲームの折り返しを前にこれ以上の点差は厳しいところ。ここから一気に突き放された関西final決勝戦の悪夢が蘇える。このイヤな流れを断ち切ったのは柏(#6)。二回生時からバランサーとして常に地味にチームに貢献してきた"存在感ある月見草"はゴール前のこぼれ球に反応して泥臭く押し込む。試合の折り返しを目前にきっちりと肩を並べて再び併走、2Qが終了する。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=35m10s

■3Q
 3Q、試合再開直後のファーストプレイ。神戸AT京田のパイプ下からの1on1に対して、クリースケアとボトムダウンのためにMDのDFが低くなる。この動きを逃すことなく、神戸オフェンス陣は素早いパス回しでトップに控える服部にボールを運び、服部はゴール正面からクロスを振りぬく。3-4、神戸が再びリードを奪う。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=41m43s) 

 1点を追う展開になるも、攻めあぐねる同志社。ただ、これまでの激しいグラウンドボールへの絡みが伏線となり、神戸DFに綻びが生じる。"田辺のリディア・シモン"羽原(#12)が脚力を生かして1on1を仕掛けるもあえなく落球。しかしながら、同志社のグラウンドボールを警戒して神戸DFがこぼれ球に群がる。これを"G線上のアリア"福田(#29)がタッチ差で確保。グラウンドボール後のブレイク状態で神戸DFがマークマンを見失う中、福田から"神の手クイック"木目田(#11)へ鮮やかなノールックパス。木目田はゴーリーをかわしてゴールを決めて試合をふりだしに戻す。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=41m43s) 

 続いて、神戸のクリアミスからのターンオーバー、先ほど同様にマークマンを見失って右往左往する神戸DFを嘲笑い、ゴール裏からノーマークで走りこんできた福田に鈴木から絶妙なラストパス。ゴーリーも不意をつかれて反応するのが精一杯だ。ついに1Q以来のリードを奪う。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=46m51s) 

 しかしながら地力に勝る神戸、すぐさま筒井のリストレからのスタンディングショットで同点。
 その後、同志社はマンアップオフェンスのチャンスを手に入れるも、"寝屋川のマトリックス"岡崎(#1)がトップから放った難しいバウンドショットに神戸のゴーリー西が反応。ファーストブレイクを狙ってすでに走り出しているロングスティックに見事なクリアパスがとおり、逆転ゴール。一方の同志社としてはマンアップという絶対有利な局面でまさかの失点。5-6とふたたび神戸の背中を追いかける展開となる。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=54m7s

■4Q
 連続失点の嫌なムードの中ではじまった4Q。神戸のテクニカルファールからポゼッションを得た同志社。セットオフェンスは"甘いマスクのバネ人間"山田(#00)、"祝勝会の風雲児"東野(#2)、"帰ってきた内部生"安谷(#8)の「ほぼ」4回生、「ほぼ」香里セット。山田は身体能力先行型の1on1でオンサイドのボトムのスライドを引き寄せ、生まれたスペースに安谷がカットイン。神戸DF陣はクリースに走り込む安谷に注意を奪われ、ポジショニングが低くなる。そしてトップにできた大きなスペースで待ち構えた東野がボールを受ける。ノーマークから得意の右手でクロスを振りぬく。ゴール右上に突き刺さる同点弾。神戸に傾きかけた会場の微妙な空気を一蹴する。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=59m

 しかしながらゲームは暫し硬直。クロスワークと個人技では群を抜く神戸オフェンス陣はゆっくりとした球回しから幾度となく1on1を仕掛けるも、この日の同志社ディフェンスは、絶好調のG河原をさらに上回るほどの超絶好調。DFの要の浅野(#26)は大砲筒井のスタンディングを肋骨でセーブ。"高槻のロッキー"永井(#25)も粘り強いDFと絶妙なクロスワークからのクリアでチームに貢献する。
 しかしながら、長いディフェンスと激しいプレッシャーの中でのクリアが続き、超絶好調のDF陣にも疲れが見え始める。見事なセーブをみせるも、セーブ後の激しいライドでゴール裏に押し込まれた河原が落球、神戸ATはきっちりとグラウンドボールを確保して門番不在の無人のゴール前へとパスを通す。パスを受けた神戸ATに対して、安谷が体を投げ出してディフェンスするも、このプレーが悪質なプッシングと判断されて2分の退場。神戸はこのマンアップを主将宮崎がきっちりとものにし、6-7と再びリードを奪う。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=1h3m50s) 

 この得点以降、神戸はマンツーマンを捨ててゾーンDFへ。華麗なチェックワークと攻撃的なDFが神戸ラクロスの代名詞でもあるが、リスクを抑えた固い守りに徹する。これに対抗して同志社は超攻撃的布陣のスペシャルセットを投入するも、この戦術の核となる山下の個人技が徹底的にマークされて糸口がつかめない。
 固い神戸DFに攻めあぐねて残り時間が消化されていくなか、万事休すかと思われた試合終了間近、戦局は急転する。
 クリースに位置どる岡崎への強引気味のフィードがルーズボールとなり、クリースから大きく転がりでる。ルーズボールに反応した柏がこれを拾い、逆サイドのリストレ付近にポジショニングしていた山下に展開するも、逆手の難しいパスとなり山下はこれを落球。しかし、この小さなミスが好機を生む。
 この落球を勝負どころと見た神戸は、DF4枚がクリースから飛び出して山下めがけてプレッシャーに走る。残るDF2枚はクリースをケア。リストレ付近とクリースにDFラインが二分され、スペースが生まれる。プレッシャーを受けながらも落ち着いて落球を処理した山下はスペースに走り込んだ岡崎にパス。岡崎のショットを信じて疑わない神戸DFは岡崎めがけて突進するも、岡崎は状況を冷静に判断したうえでパイプライン付近にポジショニングする福田に向けて展開。クリースに残された最後のDFは福田のケアに飛び出し、クリースは無人となる。福田はDFの動きを良くみて、クリースに走り込んだお祭り男にラストパス。東野(#2)はベンチ、そしてスタンドすべての期待をきっちりと受け止め、このラストパスをクイックで神戸ゴールに押し込む。土壇場の同点劇。12月の寒空の下、鶴見緑地陸上競技場だけ温度が急上昇する。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=1h14m10s

 興奮冷めやらぬなかで4Q終了のホイッスル。リーグ戦なら仲良く勝ち点1だが、この試合にはラクロスの聖地、江戸川陸上競技場への切符がかかる。ベンチで主将河原が吠える。「江戸陸に行こう」。4Qを走りきった両校ともに体力はもうギリギリだ。もうきっと長い戦いにはならない。その一球にすべてをかけろ。スタンドの声援が選手達の背中を押す。
■overtime
 試合再開。神戸は宮崎、筒井、服部の三枚看板にゲームを託す。一方同志社オフェンス陣はこれまで戦ってきた自分達のシステムを信じる。山下と岡崎の3回生コンビの突破力をベースに、福田の展開力と木目田の決定力。両陣いずれもシンプルで古典的、けれども熱いラクロスだ。苦しいけれども、楽しい、これまで先輩達が築きあげてくれた同志社ラクロスの集大成。グラウンドの選手達の一挙手一投足に心を奪われたスタンドは大きく揺れる。
 けれども終わりは突然にやってくる。両校何度目かのターンオーバーを繰り返した後、神戸服部がトップでパスを受ける。何の変哲も無いシンプルな1on1だが、相対する同志社DFはそのスピードに置き去りになる。服部が放ったショットは無情にも河原の構えるクロスをかわしてゴールに突き刺さる。神戸ベンチから白いユニフォームが飛び出し、服部を中心に歓喜の渦をつくる。紺色のユニフォームの選手達は、動くことができずその場で崩れ落ちる。
https://youtu.be/te95MXbbRBY?t=1h20m35s) 

■試合を終えて ~振り返りmtg~
 結果が残せず、チームのあり方を模索し続けた春先、腹をくくった夏合宿、心がひとつになって快進撃を遂げたリーグ戦、心が折れてチームがバラバラになりかけた関西リーグfinal、そして再び心がひとつになった全日本選手権、振り返ればあっという間の、けれども毎日が呆れるくらい長かった最後のシーズンはこうして幕を下ろした。
 7-8、創部以来はじめて全日本選手権の準決勝まで、そしてあと一歩でラクロスの聖地の江戸陸にまで駒を進めようとした若い闘紫達の戦いは終わった。
 試合後、選手達は最後の力を振り絞って肩を支えあい、最後の円陣を組む。激戦をともにした神戸の選手達へ、声援を送ってくれたスタンドへ、これまで一緒に戦ってくれた仲間達へ、涙声だけれども、これ以上ないほどの大きな声のエールが、乾いた冬の空を突き抜けていった。
(fin) 


■Writer
角田 大志(すみだ たいし)
:2002年卒OB。ポジションはDFMD。2001年の全日本選手権準決勝において、相手ATをショートで抑えた続けたDF職人。元LMFからconvertした彼がいなければ、このレポートにある戦術は存在しなかった。当時1人だけライトブルーのカスケードをかぶり、クリアする姿は「青い彗星」と各校から恐れられた。
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このページは、同志社ラクロスが2018年7月19日 15:34に書いたブログ記事です。

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